破れないもの

 人にものを尋ねるという意味で使う「うかがう」はすでに立派な敬語です。謙譲語、すなわちへりくだった表現です。

 最近、「おうかがいします」という表現が当たり前になってきました。一時代前なら二重敬語で誤用だと断じていたはずです。調べてみると、15年ほど前に国語審議会でも「定着している」と認めたようです。これも時代の流れの中での日本語の変化でしょうが、平易になる傾向の中で敬語だけは重ねていくというのは不思議です。

コトバは作られ、変えられるもの。

 江戸時代に作られた吉原遊郭では、最上位の遊女である花魁(当初は大夫といった)が、「~でありんす」という独特の表現を使っているのを時代劇で目にします。何とも不思議な言葉遣いですが、地方出身者もたくさんいたであろう吉原で編み出されたことばだったともいわれています。侍の「候(そうろう)」ことばと似た感じですね。作られたHigh-end languagesという感じです。

とはいえ、やはり変だと感じる使い方はあります。

野球の原稿で、「レフト線を破るツーベース!」。

 野球のフェアグラウンドは、左と右に90度以内です。左は三塁線と言いまたレフト線とも言います。三塁線というのはホームベースと三塁ベースを結ぶライン。レフト線と言ったら外野でフェアとファウルを分ける線です。感覚でいうと、「破る」のは三塁線。明らかな安打が「レフト線へのヒット」ではないでしょうか。レフト線はもう破れないと思うのです。

2021-04-28 | Posted in UncategorizedNo Comments » 

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