去年?昨年?

ニュースを見ていたら、「去年末」という表現が出てきました。あまり使ったことがない言い方だなあと思って調べてみました。

「角川類語新辞典」を見ると、「去年」のほうは、「去年、旅行に行きました」というときに使う“普通の言い方”としてあります。

一方、「昨年」のほうは“あらたまった語”で「昨年の台風の被害は少なかった」などと使うとしています。何より違いのは。「去年」に対応するのは「来年」ですが、「昨年」に対応するのは「明年」ということです。

そこで、漢和辞典で漢字の成り立ちを調べてみました。まず昨年の「昨」。つくりの「乍」は「徂」という字と共通するもので“いく”という意味。「いってしまった時、きのう、さき」の意とあります。

一方、去年の「去」ですが、もともとの字は「厺」という字。「大」はヒトの象形で、「ム」はいのりのコトバの意味。「祈ることで人の穢れをとりさる」「さる」という意味があります。「昨」と「去」、漢字の原意はちょっと違いますよね。

原意から行くと「昨」のほうが“時間が過ぎた”という意味を強く持っています。さらにあらたまった表現と行くことを加味すると、ニュースでは「去年末×」「昨年末〇」となります。とはいえ丁寧だから次の年を「明年」と使うかというと、これはもう書き言葉。次の年は「やってくる年」=「来年」となります。戦前の放送では「明年」を使っていたかもしれません。

ただ、コロナ禍の現在を考えると、過ぎた年は、穢れをとり「去」り、やってくる年には「明」るい希望を抱きたいものです。

2021-04-02 | Posted in UncategorizedNo Comments » 

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