店頭防止

「乗合バスの車内事故を防止するための 安全対策実施マニュアル」というものがある。

9年前に国交省が車内事故を防ぐために事業者を対象に送ったものである。

足腰が弱くなったお年寄りが急ブレーキで転倒したりするのはコワイ。若いうちはできた受け身も取れなくなっているからだ。

【高齢者の特性を踏まえた運転者教育を実施する ・高齢者の特性を踏まえた運転者教育を実施する】(高齢者は歩行中に転倒しやすく、車内事故により転倒した場合、骨折して深刻な 後遺症を残すこともあることを運転者に認識させる等。)

 最近は空いているバスで立っている人がいると運転手さんが「近くの席に座ってください」と呼びかけ、座らないとバスが動かない。これはいいことだと思った。というのも、二人掛けの席で横に荷物を置いて2人分の席を占拠しておいて、寝ている(あるいは寝たふり)人が結構いるのである。運転手さんから「座ってください!」と言われれば、寝ていようが「横いいですか!」と言いやすい。車内アナウンスで「手荷物を置いている方は、あけてください」と言ってくれるからである。

 新しいバスは運転席の反対側の最前列には座れない。妙な台になっている。なぜかなと思って調べたら、下が燃料タンクになっているからだそうだ。新しくつくられているバスは「優先席」も一人掛けで、前向きに掛けるようになっているのも影響してそうなったという。

 混んでいても二人掛けを敬遠する人も多い。奥に座ると降りるとき面倒だし、前述のようにわざと荷物を置いて座っている輩もいる。新しいバスは前向き一人掛けの席がほとんどになっていく。席が減るんだから、お年寄りや妊婦さんなどへの優先着席の勧めは当然だろう。

そこでコトバの問題である。いつも使っているバスの車内アナウンスでかつて「車内転倒事故防止にご協力ください」というものがあった。もちろん録音である。違和感があった。「車内転倒」で区切るからである。

最初に聞いたときは「車内・店頭」の事故を防ぐメッセージかと思った。でもここはバスの車内である。バス会社が経営する売店のことを言うはずがない。やがて、車内での転倒事故を防ぐ取組みに協力してください…という意味だと分かった。分かったのはいいが、そうなるとこのアナウンスが気になって仕方がない。同じように感じた人がいたのだろうか、最近このアナウンスは聞かなくなった。

どうして漢字を続けてしまったのかと思う。

NHK放送文化研究所去年11月のリポートに“かたい表現をわかりやすく”というものがあった。たとえば、「『津波浸水想定域』という表現は『津波で浸水すると考えられている場所』などと,耳で聞いて分 かりやすい言い方にしたほうがいい」としている。

警戒を促すという意味では、車内での転倒防止も同じだ。もっと言えば、少し加えてやるだけでよかったのだ。「車内での転倒事故を防止するため、着席をお願いします」とすれば問題ない。

いま沖縄県が「令和2年度世界自然遺産推薦地保全活動支援事業補助金支援団体」を募集している。決まった暁にどういう表現になるのか、ニュースを楽しみにしている。

と、ここまで書いてきて、ちゃぶ台をひっくり返すようだが、「車内転倒事故防止にご協力ください」問題も、「車内転倒事故防止」と切らずにコンパウンドして読めば、さほど違和感はなかったハズなのである。

2020-05-21 | Posted in UncategorizedNo Comments » 

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