あのコトバも変化してる

 先日法事でお寺に行きました。皆さんマスク姿でしたが、りんの音が響く本堂のあの空間だけは、世の中の喧騒とは別の空気感が漂っていました。変わってしまった日常だからこそ、変わらない場所に行くとホッとするのかもしれません。

 コトバは日々変化していきます。アクセントの平板化には拍車がかかっていますし、「ディする」のように、世代間会話が成立しないコトバも次から次へと生まれています。セイジ家は、会見のたびにカナカナ語を使います。コロナ禍で「クラスター」「ロックダウン」「ステイホーム」「ソーシャル・ディスタンス」といった聞きなれないコトバが飛び交い、今では日本語に変換されることなく通用する“日本語”になりました。一年で収束していればコロナ新語もそう増えることもなかったんでしょうが、変異種なるものが登場してコロナ禍収束の滑走路は逃げ水のように遠ざかり、さらに新たなヤツが出てきました。

「エッセンシャルワーカー」。

最初はシャンプーのブランドかと思いました。意味は「日常生活で必要不可欠な仕事をする人」だそうです。

日本語でそういえばいいんじゃないの?ステイホーム云々の時にも思ったことをまた感じてしまいました。なんとなくケムにまかれている気がします。

一方で、最近になって、やっと歪みに気づいた分野もあります。東京五輪を巡る舌禍。旧時代と新時代の壁が崩壊する音を聞いた気がしました。

「女優」というコトバも使われなくなりました。今はみなさん「俳優」です。こうしたコトバのセレクトも、過渡期なのかもしれません。あと何年かすると様々な呼び名が一つの方向性で安定していることでしょう。

空間としては変わらない厳かさを維持している寺社仏閣もコトバの部分ではかじ取りを迫られていると聞きました。経文に性差に関して古い価値観を残した表現があるというのです。「このお経はどういう意味なんですか」と聞かれたとき、しっかり答えないといけない。お坊さんの世界でも、伝統を受け継ぐお経を継いできたお坊さんと、時代を反映した新たなお経を唱えるお坊さんに別れようとしているんだそうです。

数百年前から同じものが受け継がれてきたと思っていたものも、変革を迫られる。「差別」が世界的問題になっているこの時代は、コトバにとっても重大な転換期だと感じます。

2021-04-19 | Posted in UncategorizedNo Comments » 

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