ことば、誕生

 新語・流行語大賞。昨年の対象は「三密」でした。では第1回1984年の新語・流行語大賞を覚えておられるでしょうか。当時は新語と流行語それぞれを選んでいて、新語が「おしんどろーむ」。流行語が「まるきん まるび」でした。「おしん」は伝説の朝ドラですから「そういう時代があったな」と思い出しますが、「まるきん まるび」はもう遠い過去の幻想で、どう使ったのかも曖昧です。流行語というのはそんなものかもしれません。1986年の流行語大賞金賞は「新人類」。今ではすっかり旧人類です。
 とはいえ、新語というのは最近になって生まれるようになったわけではありません。

 最近は女性も抵抗なく使うようになった「やばい」という隠語。「やば」というのを漢字にすると「厄場」で、牢屋とか看守をあらわす隠語だったとされています。悪党などが法に触れるようなことをしたり、対立する組織の縄張りを荒らしたりしたときなどに「やばなことをしちまった」と使ったのが形容詞になって「い」がついたというのが定説です。ですから本来は「見つかりそう」「つかまりそう」「危険だ」という意味(日本語大辞典)なのですが、最近は特別おいしいものに出会ったり、素晴らしい才能に出っくわしたりしたときにも「やばい」と使っています。もうほぼ定着していますから、そのうち辞書を引くと「項目2」くらいの位置で載るかもしれません。本来の意味を考えると「ヤバイ」ことです。

 具志堅用高さんにはいくつもの伝説がありますが、小さい頃はどんな子供だったんですかと聞かれて、ウチナー口で「クスマヤーでした」「クスマヤーって何ですか?」と返されたので直訳して「ウンコネコです」。どこまで正確かわかりませんが。結構有名な話です。少なくとも『アフロにハエが入って出られなくなった伝説』についてはご本人が「本当だ」と仰ってました。

 「クスマヤー」は共通語で使う「わんぱく」といった意味に近いでしょうか。でも「わんぱく」も何のことやらわかりませんよね。語源については諸説あるようですが、私が好きなのは、200年くらい前の辞書「俚言集覧」に出ている「関白が訛った」という説。権力者を皮肉ったとも思える説明は愉快です。

 先日相撲の解説をしていた元大関琴奨菊の秀ノ山親方が、押し相撲の形として「壁をつぶす」という表現をしていました。壊すのではなく「つぶす」です。確かに今の幕内力士の平均体重が160キロくらいだそうですから、小兵と言われる力士にとって、目の前にあるのは「壁」でしょう。「壊す」は、砕いたりして役に立たなくすること、またはまとまったものをダメにするという意味。「つぶす」は、押してぺしゃんこにする。使えなくすると辞書にあります。押し相撲から行けば相手の圧力を押し返し、160キロの壁をペラペラにするくらいの勢いが必要です。

 野球の試合を一発で決める「サヨナラホームラン」は、いまでは当たり前に使いますが、最初に中継で使った方はすごいと思います。言葉と事象がピタリとはまったとき、それは「流行語」ではなく、必要なことばとして認識されるのだと思います。

2021-03-23 | Posted in UncategorizedNo Comments » 

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